■ご注意
・黒バス腐向け、緑高です
・以下の連想ゲームの結果できたものになります。
イクサガDTでマリアンとエレク様のフラグが立ったな

エレク様と赤司様中の人が一緒だな

中の人といえば緑間の中の人、今期某商店街アニメで花屋のおねえさん(?)と某A○Bアニメでダンスの先生(おねえ属性)やってるな

・・・おねえか

そういえばマリアン姐さんも髪の毛緑色だな・・・←いまここ!

・匂わす程度の赤降描写がありますので、そちらも苦手なかたはご注意ください。
・PG一年組仲良し設定







高校を卒業し、大学に進学し四年で卒業。普通の商社に入社し営業として仕事をする。年に何度か海外出張をするため慣れない英語をただいま必死に勉強中。休日は大体普段足りない睡眠を貪っているか、たまには高校時代からの知り合いと昔取った杵柄でストリートバスケに出かけて汗を流す。恋人は大学在学中からの彼女がいたが、仕事が忙しくなるとともにすれ違いになり破局。特段、追いかけることもせずそっち方面の執着心も持てず、ここ三年恋人なし。三十路前で、そろそろ親には結婚を匂わす発言をされ、その度に親を適当にあしらい続けている。
高校卒業からの十年、―――緑間が姿を消してからの十年、俺、高尾和成はこうやってずっと過ごしてきた。

緑間が姿を消した原因は、誰が何と言っても俺のせいだった。
誰にも話したことはないが、周囲の人間にはそれでも事情がわかってしまうようだ。ただ、誰にもそれを問いただされることはない。諮詢するような目線が向けられるだけだ。ただ、俺に向けられる、気遣う視線ですら、どうしようもなく俺を責めているようにも感じてしまっている。
それはあの日、緑間が俺に向けた視線と一緒のものだったのだから。
今でもはっきりと覚えている。どうしようもない苦みとともに、頭の片隅にこびりついた、後悔として。



あの年は少し早めに咲いた桜が、卒業式を彩っていた。式終了後に級友たちが、別れを惜しむ時間を過ごしている。俺も同じく級友たちとの歓談に花を咲かせた後、食事のために移動を始めた友人たちの誘いを断り、三年間過ごした体育館に足を向けた。
俺自身としては偶然気が向いたからだったのだが、どうやらそれは必然だったのかもしれない。
そこにはただ一人、三年間部活の仲間だけではくくれないほどの時間を過ごした、友人というには他人行儀な、相棒といえるほどの仲となった緑間がそこにいたのだ。
緑間はいつものようにバスケットボールを出し、いつものように綺麗な弧を描くシュートを、いつものリングに向かって放つ。それは当然のようにぽっかり空いた穴に吸い込まれ、網をきれいに揺らし、その下に落ちた。
ボールが何度か跳ね、ぼんやり見ていた俺の足元に転がってくる。
緑間はその時初めて気付いたかのように、こちらに視線を向けて、眉間の眼鏡の弦を中指で押し上げた。
「高尾、久しぶりだな」
俺は十分に合格圏内の大学を考えていたこともあり、たまに後輩指導と実利を兼ね、部活に顔を出していたのだが、医学部進学を考えていた緑間は、三年のインターハイ終了後は受験勉強に集中していた。部活という緑間との最大のつながりがなくなってしまうと、同じクラスでもなかった緑間とはほとんど関わり合うことはなかった。
それまでは四六時中一緒にいたはずの彼と、今や会話を交わすことすらなくなってしまい、緑間と俺との繋がりはそんなものだったのだとどことなく寂しい気持ちを抱えたこともあった。
俺は手にしたボールを緑間に向かって放り投げた。ずっと毎日のように言っていた彼の愛称を声に出す。
「真ちゃん、久しぶり」
大学合格おめでとう、と続けると、緑間はシュートをした後、ああ、と溜息のような返事を返す。
シュートは惜しくもリングに阻まれた。
俺は体育館の中に足を入れると、数歩軽く走り外れたシュートを拾い、そのまま軽くその場で飛び上がりレイアップシュートを入れた。
「真ちゃん、鈍ってるんじゃない?外すなんて珍しい」
「ほとんど半年ぶりだからな、昔と同じようにはいかないだろう」
そうだなと笑うと、つられて緑間も薄く笑う。ややあって彼はためらうような表情をし、そのまま俯いた。
「高尾、お前はこの後用事はあるのか?」
緑間から話しかけられた。基本的に寡黙な彼には俺から話しかけるばかりだっただというのに、珍しい事もあるものだ。
「話したいことがある」
緑間が数歩、こちらに向かって距離を詰めた。
思いつめたような彼の緊迫感に、俺は自然と唾を飲み込んだ。
「どうしたの真ちゃん」
茶化すような声を出すが、緑間の表情は変わらない。
しばらくそのまま見つめられた。
躊躇う様な、戸惑う様な、どこか俺を気遣う様な視線が、頭上から降り注ぐ。
どれだけの時間が経っただろう。やがて発生された緑間の声に、俺は耳を疑った。
「高尾、好きだ」

緑間の視線が、間違いではないということにすぐに気付いた俺は、手慰みに持っていたボールを投げ捨て、その場から逃げだした。



それから十年、俺は緑間と一度も連絡を取ろうとしなかった。

「僕は緑間君の気持ちがなんとなくわかるような気がします」
同じように中学時代、彼らの前から姿を消したらしい黒子テツヤが、いつか俺の前で言ったことがある。
どこかこちらをうかがう様な表情で、黒子が俺を見つめ、ややあってまた視線を前に向けた。
どうせだったら俺を詰り、怒ってほしかったが、
「キミにそんなことをしても仕方ありません。多分、キミを責めても仕方のないことだと思いますから」
緑間を何とかできるのは俺しかいないのだ、とそう言外に告げられているような気がしたが、あえて俺はそれに気付かない振りをして日々を暮していた。

だってあの時逃げた俺に、今更何ができるというのだろうか。

彼と同じ大学に進学した人間はおらず、通学時間が掛かることを原因にして親元から離れたらしい。大学近くに居を構えたらしく、俺の生活圏外から緑間の姿は本当になくなってしまった。
割と交流のあったらしい黒子がもたらした情報では、それからしばらくの間、携帯電話での連絡が取れていたようだ。それを知ってもなお、連絡を取ることはできなかった。緑間から連絡を貰えさえすれば、話すこともできたのだが、それでも俺から連絡を取ることはどうしてもできなかった。そうこうしているうちに、三年前に携帯電話の連絡先が変わったらしいということが、やはり黒子からもたらされた。
緑間の大学は知っていたため、本気で俺が探そうと思えば探せたはずだ。
だが、それだけの勇気がどうしても足りなかった。
年末年始に帰省するであろう実家に押し掛けることも、かつての仲間たちを頼り、彼を無理やり探し出すことも、数年間は通じていたらしい連絡先に、電話の一つもすることもできなかった。何も、できなかった。
「緑間、ごめん」
躊躇っているうちに俺は大学を卒業し、仕事をはじめ、さらに学生時代より時間が取れなくなってしまったことを言い訳にして、彼の姿をなかったかのように、振る舞い続けていた。
文字通り、臭いものには蓋をした生活を、送っていたのだ。



「いい加減にしろ高尾和成」
会社帰りに待ち構えていたらしい赤司征十郎は、久しぶりの再会だというのに挨拶もそこそこに俺の右腕を強引に掴んだ。赤司に付き合わされているらしい、降旗光樹が申し訳なさげに俺の左腕を同じように掴む。
彼らとは高校時代、学校こそ異なっていたが、同じポジションということで最終的には意気投合し、共に楽しく過ごした友人たちだ。
「ちょ、征ちゃん??なに、なんなの突然?!」
赤司の行動の意図が見えず、俺は抵抗しながら問いただそうとする。すると、赤司は鋭い目線を向けた。すかさず降旗のフォローが入る。
「あ、赤司、街中だから暴力とかはまずいから!
・・・ごめん高尾、久しぶり。忙しいとこ悪いけど、とにかく俺らについてきてくれ」
ちっと舌打ちする音が聞こえたが、それきり赤司はまた前を向き、歩き出す。
俺は赤司の気を咎めないようにしぶしぶ歩き、仕方なくといった風の降旗のほうを向いた。
「突然ごめん高尾。今日特に予定ってなかったよね?」
赤司と異なりこちらの予定を確認してくれる降旗の気遣いにほだされ、とりあえずこの場は赤司の先導に従って歩くことにする。
大通りに出るとそのままタクシーを拾う。
まず先に赤司が乗り込み、運転手に行き先を告げた。興味深そうに俺たちを見るが、赤司の睨みつけるような眼光に、恐怖を感じたらしい運転手はすぐに前を向き、そのままこちらを振り向こうとはしなかった。
降旗に促され、赤司の隣に乗り込む。最後に降旗自身が乗り込んだ。
この場になっても逃亡を防ごうと、後部座席の真ん中に乗せられたまま、タクシーは走り出した。
見知った景色が通り過ぎる。三十分ほどして、目的地に辿り着いた。
下ろされた俺は周囲に表示された住所表示にまさかと息を呑む。
そこは世界有数のゲイ・タウン、新宿二丁目だった。



あまりのことに茫然としていると、赤司がそのまま腕を引っ張り歩き出す。
「ちょ、これ、光ちゃんどういうこと一体?!俺にはそっちの趣味はないよ?!」
「黙れ和成」
場所が場所だけに半泣きになりながら疑問符を浮かべる俺を哀れに思ったのか、降旗が赤司に何やらを相談する。
「赤司、やっぱりちょっとくらい説明してもいいかな・・?」
「・・・したいのなら光樹、お前から説明してくれ」
うん、と頷き、降旗は俺を振り返る。
「いいか、高尾、落ち着いて聞いてくれ」
やっぱり聞きたくないというのは今更遅かった。

「緑間が見つかった」



その言葉に衝撃を受けたままの俺が呆けていると、赤司の足が新宿二丁目一角のいわゆるニューハーフ・パブの前で止まった。
「・・・ここだ」
「ちょ、征ちゃん、んなバカな?!緑間が、真ちゃんがここに?!」
信じられずに問いただす。赤司は挙動不審ですらある俺とは全く逆で、落ち着き払ってすらいる。
「本当だ。・・・一度テツヤと光樹に確かめてきてもらった・・・」
「赤司本人が行ったら悪目立ちするからなぁ・・・」
どこか遠い目をしながら降旗はいう。
降旗はいわゆる本人も認めるモブ顔をしているし、緑間も赤司ほどは認識はないだろう。さらに黒子であれば元々の存在感の名さも相まってうまく人ごみに紛れることができる。もちろん緑間の人相もよく知っているため、確認も容易い。二人に頼んだのは万が一にも緑間に怪しまれないためだろう。常連でもない人間が一人でこのような場に入るのはトラブルの元だろうし、それもともかく、なんというか。
「・・・真ちゃんのためにごめん」
いたたまれなさに落ち込んでいると、降旗は笑いながら俺の肩を叩いた。
「いいよ、別に。早く緑間と仲良くしてこいよ!」
行くぞ、という赤司の声に促され、俺は一歩を踏み出した。



魔窟の中に足を踏み入れたRPGのパーティーの気分だ。
さしずめ勇者は俺で赤司は魔道士、降旗は僧侶というところだろうか。やはりもう一人くらい剣士タイプがほしいところだったが、そんなわがままは言っていられない。
ただ、さっきから赤司の整った顔立ちが周囲の気を引いてしまい、
「やっぱり赤司は上に置いて来ればよかったかも・・。これじゃあ緑間に辿り着く前に本人に気付かれて逃げられちゃうんじゃないか・・?」
降旗が心配する事態となっていた。店員が我先にと赤司の元に寄ってくるのだ。
「いや、ここでこれなら征ちゃん上に置いてくるほうがやばいって絶対」
確信をもって俺がそういうと、降旗も目の前の光景に苦笑いを浮かべながら頷いた。
「ま、とりあえず俺らは先に行こうぜ。用があるのは緑間一人だしな」
「え、あ、こ、光樹?!」
めったに聞けない赤司の焦り声が聞こえた気がしたが、聞こえなかったふりをして降旗と二人、席についた。



「こんにちわ〜初めまして、ぐりこですぅ」
盆を持ち、ぐりこと名乗った店員が俺の隣に座った。俯いている俺には随分体格のいい店員の顔はよく見えなかった。
「・・・高尾、やっぱり後悔してる?」
席に付き、とりあえず喉を潤すためウーロン茶を頼む。
「お兄さん、こういう場所は初めて?」
キャバクラなどと同じようなシステムらしく、注文の品を持ってきたぐりこちゃんが俺の隣に座りながら聞いてきた。
俺は膝に立てた腕でもって頭を抱えたまま、じっとしている。グラスの氷が解け、甲高い音が鳴った。
顔を上げ、店内を見回し緑間を探す勇気が出せなかった。
あの時逃げだした俺が、彼に何を言えるのだろうか。今更のこのこと、どんな顔をして出て行けばいいというのだろうか。
目の前に置かれたグラスを降旗が手に取った。二度目ともあれば慣れたものなのかもしれない。赤司はまだ席につかない。遠くで悲鳴が聞こえた気がした。

何かに気付いたらしい降旗が、口に含んだウーロン茶を吹き出しそうになり、ぎりぎり堪える。
「た、高尾!高尾!横、横、み・・・」
「あら、お兄さん大丈夫?」
すかさずぐりこちゃんがナプキンを掴み、降旗の隣に移動する。口元を拭ってやっているようだ。案外甲斐甲斐しいものなのだなと思う。
「・・・・・!!たかっ・・・!」
「お兄さん、ちょっとむせちゃったのかしら?大丈夫?」
あの日以来、同じ室内に緑間がいたことはない。十年間で最も近くに緑間がいる。どうしようもなく緊張を隠せない。腕が震えるのを感じる。口内に溜まった唾液を飲む音が耳にやけに大きく響いた。
「な、なあ、光ちゃん・・・。今日、真ちゃん・・・緑間休みとかじゃないの、かな」
ふがっ、という降旗の声がする。やたら降旗は咳き込んでいて、ぐりこちゃんは必死に口元を覆って丸めた彼の背中を撫でていた。
「ねぇ、お兄さん、お連れ様、風邪なんじゃない?・・・今日は出直したら?」
ぐりこちゃんの勧めに従ったほうがいいのかもしれない。俯いたまま、降旗を見ていないのでわからないが、なんだかやけに苦しそうだ。ずっと声を籠らせているし、咳き込んでいる。随分調子が悪そうだ。先ほどまではそんな様子は見られなかったが、赤司と俺の前で我慢していたのかもしれない。
出直そうか、とそう考え出したときに、どこか焦燥とした表情の赤司が覚束ない足取りで俺たちのテーブルの前に現れた。何故か服装が乱れ、頬に幾つかキスマークのように見える何かがついている。店内の暗さに足を取られ、転んでしまったのだろう。大丈夫だろうか。
「・・・何を考えている和成、僕は今日真太郎の出勤を確認している。
ここまで来て怖気づくつもりか?」
図星をさされ、思わず立ち上がる。
「征ちゃん、俺、だって、今更、あいつになんて言えばいいのか、まじでわかんねーんだよ・・・!
十年前はごめん、逃げてごめんってか?そんなんであいつの誠意に応えられるわけないだろ?!」
いきなり出した大声に店内が静まり返る。赤司は俺の顔をじっと見つめたままで、降旗は胸を抑えて苦しそうに呻いている。ぐりこちゃんは相変わらず降旗の介抱をしているようだ。急に発生した修羅場に関わりたくないのかじっと黙ってうつむいている。
俺は赤司が黙っていることをいいことに、止まれずしゃべり続ける。十年間、溜めに溜め続けた澱みのすべてを吐き出すかのように。
「だって俺のせいだぞ?俺は真ちゃんの告白をなかったことにして、そのまま逃げたんだぞ?あれだけずっと一緒にいたのに俺はあのとき逃げたんだぞ?!
・・相棒が聞いてあきれるっつーの・・」
あとは言葉にならなかった。鼻の奥がツンとしたあと、こみあげる何かに任せていると、涙が次から次へとあふれてきて止まらなかった。視界がぼやけて仕方がない。嗚咽が漏れる。十年間我慢してた何がは、決壊すると留まることを知らなかった。
「ごめんなぁ、・・ごめんよぉ・・・!」
あああ、と声を上げながらただひたすら泣いた。苦しい、苦しい。
十年間緑間と会えなかった。これだけの時間があったら、どれだけ彼の隣で俺は過ごせたのだろうか。
秀徳高校バスケットボール部で、彼と共に過ごした時間は、三年夏の引退を境に終わってしまった。三年に満たない。二年半しかなかったのだ。それだけの間で話しきれないことはたくさんある。もっと色んな話を彼としたかった。遊びにも行きたかったし、将来の話もしたかった。
大学の様子。就職活動の話や、仕事の愚痴。美味しそうだと思った食べ物、旅行先での出来事、風邪をひいてしまったことや、季節の移り変わり。緑間の話も聞きたい。医者を目指す彼の勉強の内容。おそらく理解はできないだろうが、愚痴の一つ位は受け止めてやれるだろう。気分転換に、バスケに誘うのもいい。
・・・何でもよかった。この彼と共に過ごすはずだった十年間を失ったことが、あの時逃げた罰だというのなら、もう十分なんじゃないのか?
柄にもなく、ただの子供のように泣き続けた。あのときぽっかりと開いた穴から、次々と想いが溢れてきて、苦しいほどだ。
「もう会えねえよ、征ちゃん・・・!だってもう、苦しい、辛いんだよ、俺」



「ということのようだが?それといい加減に光樹を離せ、『ぐりこちゃん』」
赤司がぐりこちゃんに介抱されたままの降旗を奪い取る。口に詰められていたナプキンを取り除く。咳き込んだ後、肩を大きく上下させて酸素を吸い込んだ。
「あかしありがと。・・・マジ死ぬかと思った」



ぐりこちゃんが立ち上がる。ヒールを履いているせい、とは言い切れないほど妙な威圧感があった。おそらく俺より二十センチ以上の高い。照明の明かりが遮られた。
「・・・おまえは十年間、ずっと後悔していたんだな」
呆けたように言うその声に、どこかひどく懐かしさを感じて俺は頷く事しかできなかった。
米神に痛みを感じている。耳鳴りまでし出す。目の前のニューハーフに、緑間の面影を感じたのは、おそらく諦めきれない後悔のせいだろう。祈るような気分ですらあった。
「多分、俺も真ちゃんが好きだったはずなのに」それでも逃げた、俺はバカだ。
「お前の前から姿を消して、お前に負担を掛けたから勘違いしているだけなんじゃないのか?」
ぐりこちゃんが問いかけをする。どうも俺の贖罪のために緑間の役をしてくれるようだ。
あの時置いてきた緑間。捨ててしまった彼との時間。十年を遡り、あのときの落し物を拾いにいく。
これが終わったら、本当に彼を探しに行こう。あの時の彼の告白に対する答えを、彼に渡したい。
自分が楽になるためだ、ということは否定しない。せめて、俺なりにあの十年間に決着を付けさせてほしい。
「勘違いなら、こんなに苦しいわけない」
男同士というセクシャルマイノリティへの偏見はもちろんある。
ただそれよりも、今までの関係が壊れてしまうのがただひたすら怖かったのだ。
あの時頷いて、緑間と恋人同士という関係になったら。それが壊れてしまったら、もうお互いのままではいられないだろう。だが友達同士であれば、一生友達同士なのではないか?彼の人生をすぐ隣で見守れる友達のままでいられるのでないか?俺は臆病だ。可能性の高いと感じた選択を信じて何が悪い?
「・・・俺は一体何をしていたのだよ・・・」
ぐりこちゃんが腕を組み、溜息をついた。
「とりあえず高尾、一発殴らせろ」
言うが早いがぐりこちゃんは、今だ泣き続ける俺の頬に向かって拳を作り、一歩踏み込み腕を振りぬいた。



ソファに倒れこみ、俺は目を開く。痛みと衝撃に思考が中断する。とりあえず殴られた頬に手を当てた。
ぐりこちゃんは腕を組んだ。腕が胸の下に潜ったせいで、胸の空いたドレスを来ていた彼女(彼)のバストが上がって寄せられ谷間が深くなる。重たそうな胸だった。
「やはりこのテーブルに付くのではなかったな。入店した赤司に手が空いていたものが全員釣られたから仕方なく付いたのだが、失敗だったのだよ。赤司を餌としようとしたのはお前の発案か?降旗」
「いや違う、赤司本人が勝手に・・餌になっちゃったから」
「・・・そうか、すまなかったな、赤司」
赤司は黙り込んだ。無言で乱れたジャケットを整える。
俺はきょとんとしたまま、彼らのやり取りを見つめていた。
初めて目にした、ぐりこちゃんの全身は、とても美しいものだった。
肩ひもの華奢な白いロングドレスの裾からは白い足首が覗き、ドレスと同じ色をしたパンプスに包まれている。女性としては背が高すぎるようだが、足が長く、顔も小さいためまるで外国人モデルを見ているかのような印象を受けた。胸元からはこぼれんばかりの豊満なバストを惜しげもなく晒し、肩こそストールで覆っているようだが、そこから伸びるしなやかな腕は障り心地がよさそうだ。なめらかな手の甲から続く白くて長い指先は丁寧にテーピングまでする念の入れようだ。・・・テーピング?
怜悧なまでに整った顔立ちは品の良い化粧がされ、指通りのよさそうな髪は胸下までのロングで、カチューシャを付けている以外は、下ろされているだけだ。だが、とくに手を入れずとも髪の美しさだけで他に飾る必要がないのは、俺にも十分に見て取れる。カラーリングしたとは思えない髪は鮮やかな緑色をしていた。・・・緑色?
既視感に、パズルのピースが嵌っていくような感触がする。
腫れぼったい目を擦ると、それを目敏く見つけたぐりこちゃんは新しいナプキンを用意し、俺の目元をぬぐう。
目の前に惜しげもなくおっぱいの谷間が晒された。
「高尾、擦ってごみが入ったらどうする」
思考が中断したままの俺に赤司が呆れたように溜息をついた。
「まだ気が付かないのか?・・・そちらのぐりこさんが真太郎だぞ」
赤司の声が耳に届く。やけに明瞭に響いた声に、目の前のぐりこちゃんのおっぱいとぐりこちゃんの顔を見た。
眉間に皺の寄ったその表情が、十年前の緑間の表情と重なった。
「・・・真ちゃん?緑間で、グリーンだから、ぐりこちゃん?」
幼子のように話す俺に、緑間は柔らかく微笑みながら頷いた。
「そうだ。安直だとお前は笑うか?・・・久しぶりだな、高尾。すまなかったのだよ」
緑間が目の前にいる。ただただ信じられなかった。十年前の緑間が。
あのとき逃げ出した俺が、ようやく緑間の前に戻ってきた。ごめんね緑間。・・・ただいま。
ぼんやりとしながらも、目の前のおっぱいを掴む。
「・・・真ちゃんにおっぱいがある・・・」

後から聞くに、半笑いを浮かべた俺はそのまま意識を手放したらしい。



みどりまただいま(2013/02/24)

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